全身性エリテマトーデスへの幹細胞治療について

全身性エリテマトーデスへの幹細胞治療について

全身性エリテマトーデス(SLE)は、免疫システムが自分自身の細胞や組織に反応し、皮膚、関節、腎臓、血液、神経など全身に炎症や臓器障害を起こすことがある自己免疫疾患です。

現在はヒドロキシクロロキン、グルココルチコイド、免疫抑制薬、生物学的製剤などを病状に応じて組み合わせ、寛解または低疾患活動性を目指す治療が行われています。一方で、十分な効果が得られない場合、再燃を繰り返す場合、薬剤の副作用が問題になる場合もあります。

こうした中、治療抵抗性SLEに対して、臍帯由来間葉系幹細胞(MSC)やウォートンジェリー由来MSC(WJ-MSC)、セクレトームを用いた免疫調整研究が進められています。本記事では、SLEの病態、標準治療の課題、研究中の作用メカニズム、臨床エビデンス、安全性と限界を整理します。

全身性エリテマトーデスでは免疫の中で何が起きているのか

以下では、全身性エリテマトーデス(SLE)で一般的に知られている免疫の変化を整理します。これは特定の治療効果を示すものではなく、SLEで皮膚、関節、腎臓、血液、神経など全身に炎症が起こる背景を理解するための病態解説です。

全身性エリテマトーデスは、本来であれば細菌やウイルスなどから体を守る免疫システムが、自分自身の細胞や組織を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患です。

SLEでは、免疫の異常が一つの臓器だけにとどまらず、皮膚、関節、腎臓、血管、血液、神経、肺、心臓など、全身のさまざまな場所に影響を及ぼすことがあります。

免疫を警備システムに例えるなら、本来は外から入ってきた敵だけを見つけるはずのセンサーが、自分の細胞の一部まで敵と誤認してしまう状態です。その結果、体内のあちこちで不要な炎症が起こりやすくなります。

免疫寛容が乱れると自分を敵と誤認する

健康な免疫システムには、自分自身の細胞や組織を攻撃しないようにする仕組みがあります。これを免疫寛容と呼びます。

SLEでは、この免疫寛容が乱れ、本来は攻撃対象ではない自分の細胞核成分、DNA、RNA、核内タンパク質などに対して免疫反応が起こりやすくなります。

免疫寛容の乱れには、遺伝的背景、性ホルモン、紫外線、感染症、ストレス、薬剤、喫煙など、複数の要因が関わると考えられています。つまりSLEは、単一の原因だけで起こる病気ではなく、体質と環境要因が重なって発症・再燃しやすくなる病気です。

細胞の残骸処理がうまくいかないことがある

私たちの体では、古くなった細胞や傷ついた細胞が日々処理されています。通常は、不要になった細胞の残骸は免疫システムによって静かに片付けられ、強い炎症を起こさないように調整されています。

SLEでは、この細胞残骸の処理がうまく進まないことがあります。細胞の核に含まれるDNAやRNA、核タンパク質などが免疫システムにさらされると、それらが自己抗原として認識されやすくなります。

その結果、自分の細胞の成分に対して自己抗体が作られ、慢性的な自己免疫反応につながることがあります。

抗核抗体、抗dsDNA抗体、抗Sm抗体などの自己抗体が作られる

SLEでは、抗核抗体(ANA)、抗dsDNA抗体、抗Sm抗体などの自己抗体が検出されることがあります。

抗核抗体は、細胞の核に含まれる成分に反応する自己抗体の総称です。SLEの診断を考えるうえで重要な検査ですが、抗核抗体が陽性だからといって必ずSLEというわけではありません。

抗dsDNA抗体は、DNAに反応する自己抗体で、SLEの活動性やループス腎炎との関連が知られています。抗Sm抗体はSLEに比較的特異性が高い自己抗体として扱われます。

これらの自己抗体は、診断、活動性評価、臓器障害の確認において重要な手がかりになります。

免疫複合体が全身の炎症に関わる

SLEでは、自己抗体が自己抗原と結合し、免疫複合体と呼ばれるかたまりを作ることがあります。

この免疫複合体が血液中を巡り、腎臓、皮膚、関節、血管などに沈着すると、補体や免疫細胞が反応し、炎症が起こりやすくなります。

特に腎臓では、糸球体に免疫複合体が沈着することでループス腎炎が起こることがあります。ループス腎炎では、蛋白尿、血尿、むくみ、高血圧、腎機能低下などが問題になる場合があります。

補体が活性化し、C3やC4が低下することがある

補体は、免疫反応を助けるタンパク質の集まりです。細菌などの異物を排除するために重要な働きを持っています。

SLEでは、免疫複合体によって補体が活性化され、消費されることがあります。その結果、血液検査でC3やC4が低下することがあります。

補体低下は、SLEの活動性やループス腎炎の評価で参考にされることがあります。抗dsDNA抗体の上昇と補体低下が同時に見られる場合、病気の活動性が高まっている可能性を考えることがあります。

I型インターフェロンが炎症を持続させることがある

SLEでは、I型インターフェロンと呼ばれる免疫シグナルが病態に深く関わると考えられています。I型インターフェロンは、本来ウイルス感染などに反応して体を守るために働く仕組みです。

しかしSLEでは、自分のDNAやRNAなどに対する反応をきっかけに、I型インターフェロンのシグナルが過剰に働くことがあります。

I型インターフェロンが高まると、樹状細胞、B細胞、T細胞などが活性化されやすくなり、自己抗体産生や慢性炎症につながる可能性があります。

このようなI型インターフェロンに関連する免疫の活性化は、SLEの皮膚症状、関節症状、血液異常、腎炎などの病態を考えるうえで重要です。

B細胞と形質細胞が自己抗体を作り続ける

B細胞は、抗体を作る免疫細胞です。B細胞が活性化すると、形質細胞へ分化し、抗体を産生します。

SLEでは、B細胞が過剰に活性化し、自己抗体を作る形質細胞が増えやすくなることがあります。これにより、抗dsDNA抗体や抗Sm抗体などの自己抗体が持続的に作られ、免疫複合体や炎症に関わることがあります。

B細胞を活性化させる因子として、BAFFやBLySと呼ばれるシグナルも研究されています。そのため、SLE治療ではB細胞の働きや自己抗体産生を抑えることが重要な治療戦略の一つになります。

T細胞のバランスが乱れることがある

T細胞は、免疫反応の方向性を調整する重要な細胞です。SLEでは、T細胞の働きやバランスが乱れることがあります。

炎症を促すTh17細胞の反応が強くなったり、免疫を抑える制御性T細胞(Treg)の働きが不十分になったりすると、自己免疫反応が続きやすくなります。

つまりSLEでは、自己抗体を作るB細胞だけでなく、それを支えるT細胞の異常も病態に関わっています。

NETsが自己免疫反応を強めることがある

好中球は、細菌などから体を守る免疫細胞です。好中球は異物と戦う際に、NETsと呼ばれる網のような構造を放出することがあります。

NETsにはDNAや核タンパク質などが含まれており、通常は感染防御に役立つ仕組みです。しかしSLEでは、NETsに含まれる自己成分が免疫反応の標的になり、自己抗体産生やI型インターフェロン反応を強める可能性が研究されています。

このように、SLEでは自分の細胞から出た成分が、さらに自己免疫反応を刺激する悪循環に関わることがあります。

再燃と寛解を繰り返すことがある

SLEの特徴の一つは、病気の活動性が一定ではなく、再燃と寛解を繰り返すことがある点です。

再燃とは、症状や検査値が悪化し、病気の活動性が高まる状態です。寛解とは、症状や炎症が落ち着いている状態です。

紫外線、感染症、ストレス、睡眠不足、薬の中断、ホルモン変化などが、再燃のきっかけになることがあります。SLEでは、症状が落ち着いている時期でも、定期的な診察と検査で活動性を確認することが重要です。

皮膚、関節、血液、神経など全身に症状が出る

SLEでは、免疫反応が全身に及ぶため、症状も多様です。皮膚では蝶形紅斑、日光過敏、円板状皮疹、脱毛、口腔潰瘍などが見られることがあります。

関節では、関節痛や関節炎が起こることがあります。血液では、白血球減少、血小板減少、貧血などが見られることがあります。

神経や血管に炎症が関わると、頭痛、けいれん、精神症状、血栓症などが問題になることがあります。ただし、どの症状が出るか、どの程度重くなるかは患者さんによって大きく異なります。

ループス腎炎は重要な臓器障害の一つ

SLEで特に重要な臓器障害の一つが、ループス腎炎です。ループス腎炎では、腎臓の糸球体に免疫複合体が沈着し、炎症が起こります。

ループス腎炎があると、蛋白尿、血尿、むくみ、高血圧、腎機能低下などが起こることがあります。初期には自覚症状が乏しい場合もあるため、尿検査や血液検査による定期的な確認が重要です。

進行すると慢性腎臓病や腎不全につながることがあるため、SLEでは腎臓の状態を慎重に評価する必要があります。

SLEDAI、抗dsDNA抗体、補体、尿蛋白で活動性を評価する

SLEでは、症状だけでなく、血液検査や尿検査を組み合わせて病気の活動性を評価します。

代表的な評価指標として、SLEDAIという活動性スコアがあります。また、抗dsDNA抗体、補体C3・C4、尿蛋白、尿沈渣、腎機能、血球数なども重要です。

これらの指標を組み合わせることで、病気が落ち着いているのか、再燃しているのか、腎臓などの臓器障害が進んでいないかを確認します。

なぜWJ-MSCやセクレトームが注目されるのか

全身性エリテマトーデスでは、自己抗体、免疫複合体、補体、I型インターフェロン、B細胞、T細胞、NETs、慢性炎症など、複数の免疫異常が関わります。そのため、ひとつの経路だけを抑える治療では十分に対応しきれない場合があります。

そこで注目されているのが、間葉系幹細胞(MSC)や、MSCが分泌する成長因子・サイトカインなどを含むセクレトームです。MSCは、免疫調整作用、抗炎症作用、B細胞・T細胞バランスへの作用、炎症性サイトカインの調整、組織修復環境への作用などを通じて、SLEに関連する免疫環境へ働きかける可能性が研究されています。

特にウォートンジェリー由来間葉系幹細胞(WJ-MSC)は、臍帯由来の若い細胞として、セクレトームを介したパラクリン作用が注目されています。WJ-MSC療法は、SLEを治癒させたり免疫を完全にリセットしたりする治療として確立されているわけではありませんが、免疫調整作用、抗炎症作用、組織修復環境への作用が研究されています。

POINT

  • 全身性エリテマトーデスでは、免疫寛容が乱れ、自分自身の成分に対する自己抗体が作られます。
  • 抗核抗体、抗dsDNA抗体、抗Sm抗体などの自己抗体は、SLEの診断や活動性評価で重要です。
  • 自己抗体と自己抗原が作る免疫複合体は、腎臓、皮膚、関節、血管などの炎症に関わります。
  • 補体C3・C4の低下、I型インターフェロン、B細胞、T細胞、NETsなどがSLEの病態に関与します。
  • SLEは再燃と寛解を繰り返すことがあり、SLEDAI、抗dsDNA抗体、補体、尿蛋白などで活動性を評価します。
  • WJ-MSCやセクレトームは、免疫調整作用、抗炎症作用、B細胞・T細胞バランス、組織修復環境への作用を通じて、SLEに関連する病態へ働きかける可能性が研究されています。

全身性エリテマトーデスと現在の治療の課題

SLEは、皮膚や関節の症状だけでなく、腎臓、血液、神経、肺、心臓などにも影響することがある全身性の自己免疫疾患です。病状は患者さんごとに異なり、寛解と再燃を繰り返すことがあります。

現在の治療では、病状や臓器障害に応じて、ヒドロキシクロロキン、グルココルチコイド、免疫抑制薬、生物学的製剤などが用いられます。治療の目標は、寛解または低疾患活動性を維持し、再燃や臓器障害を防ぎながら、薬剤による負担をできるだけ抑えることです。

近年はベリムマブやアニフロルマブなどの生物学的製剤も治療選択肢に含まれています。ループス腎炎では、ミコフェノール酸系薬やシクロホスファミドを軸に、ベリムマブやカルシニューリン阻害薬などを組み合わせる治療も検討されます。

このように治療選択肢は以前より増えていますが、すべての患者さんで十分な効果が得られるわけではありません。再燃、感染症、グルココルチコイドの長期使用に伴う骨粗しょう症・糖尿病・心血管リスク、免疫抑制薬による副作用などが課題になることがあります。

そのため、現在の標準治療とは異なる作用機序を持ち、治療抵抗性SLEの免疫環境へ働きかける新しい治療戦略の研究が続けられています。

POINT

  • SLE治療では、寛解または低疾患活動性の維持と臓器障害の予防が重要です。
  • ヒドロキシクロロキン、グルココルチコイド、免疫抑制薬、生物学的製剤などを病状に応じて使用します。
  • 治療選択肢は増えていますが、再燃や薬剤の副作用、治療抵抗性が課題になることがあります。
  • MSC療法は標準治療の代替ではなく、治療抵抗性SLEに対する研究段階のアプローチです。

全身性エリテマトーデスに対する幹細胞治療と再生医療の新たな可能性

SLEに対するMSC療法では、損傷した組織を直接作り替えたり、免疫を完全にリセットしたりすることよりも、過剰な免疫反応や炎症環境へ働きかける免疫調整作用が研究されています。

MSCは骨髄、脂肪組織、臍帯などから得られます。これまでのSLE臨床研究では、主に同種臍帯由来MSCが、治療抵抗性または重症の患者さんを対象に検討されてきました。

臍帯由来MSCは、増殖能、分泌能力、免疫調整作用などの観点から研究されている細胞ソースの一つです。その中でもウォートンジェリー由来MSC(WJ-MSC)は、成長因子、サイトカイン、抗炎症性因子などを含むセクレトームを介したパラクリン作用が研究されています。

ただし、SLEのヒト臨床研究で用いられた「臍帯由来MSC」が、すべて同一の製造方法や同一のWJ-MSC製品であるわけではありません。また、WJ-MSCが骨髄由来MSCや他の細胞ソースよりSLEに対する臨床効果で優れていると確定しているわけでもありません。

現時点でSLEに対するMSC療法は標準治療として確立されておらず、治験・臨床研究として安全性、適切な投与量、投与回数、対象患者、有効性が検討されている段階です。

ウォートンジェリー幹細胞について
詳しくはこちら

全身性エリテマトーデスに対する幹細胞治療の作用メカニズム

SLEに対するMSC療法で研究されている主な作用は、免疫細胞のバランス、炎症性サイトカイン、セクレトームを介した組織環境への作用です。これらの作用機序は前臨床研究や初期臨床研究で検討されていますが、すべてがヒトで確立されているわけではありません。

免疫細胞のバランスを調整する可能性

MSCやセクレトームは、T細胞、B細胞、制御性T細胞(Treg)、Th17細胞などの免疫反応へ作用する可能性が研究されています。

前臨床研究や一部の臨床研究では、免疫学的指標やB細胞・T細胞の構成に変化が報告されています。ただし、すべての患者さんで自己抗体産生や免疫異常が正常化することを示すものではありません。

そのため、MSC療法は「免疫をリセットする治療」ではなく、過剰な免疫反応に関わる環境を調整する可能性が検討されている治療研究として理解する必要があります。

炎症性サイトカインに働きかける可能性

SLEでは、I型インターフェロン、BAFF、IL-6、IL-17、TNF-αなど、複数の免疫シグナルや炎症性サイトカインが病態に関わります。

MSCは、免疫調整因子や抗炎症性因子を分泌し、炎症性サイトカインや免疫細胞の反応へ作用する可能性が研究されています。

ただし、炎症を完全に止めたり、SLEの再燃を確実に防いだりする効果が確立されているわけではありません。

セクレトームを介したパラクリン作用

MSCは、成長因子、サイトカイン、抗炎症性因子などを含む分泌因子の集合体であるセクレトームを放出します。

セクレトームは、B細胞の活性化、抗原提示、NETosis、酸化ストレス、炎症性サイトカイン、組織を取り巻く環境へ作用する可能性が前臨床研究で検討されています。

WJ-MSC由来conditioned medium(培養上清)を用いたSLEモデル研究もありますが、これらは動物・細胞レベルの前臨床データであり、ヒトSLE患者さんの臨床効果を示すものではありません。

臓器障害に関わる炎症環境への作用

SLEでは、腎臓、皮膚、関節、血液、神経などに炎症や臓器障害が起こることがあります。

MSCやセクレトームは、臓器障害に関わる免疫反応、炎症性サイトカイン、血管内皮や組織を取り巻く環境へ作用する可能性が研究されています。

ただし、損傷した臓器を元通りにしたり、臓器障害の進行を確実に止めたりする治療として確立されているわけではありません。

このように、SLEに対するMSC療法では、免疫細胞、炎症性サイトカイン、セクレトームを介した組織環境へ多面的に働きかける可能性が研究されています。

一方で、SLEの体質や原因を根本的に取り除いたり、標準治療を置き換えたりする治療として確立されているわけではありません。

POINT

  • MSCやセクレトームは、B細胞、T細胞、Treg・Th17バランスなどへの作用が研究されています。
  • 炎症性サイトカインや免疫細胞の反応を調整する可能性が検討されています。
  • WJ-MSC由来conditioned mediumのSLE研究は前臨床段階です。
  • 免疫を完全にリセットしたり、SLEを根治したりする治療ではありません。

全身性エリテマトーデスに対する幹細胞治療の有効性のエビデンス

SLEに対するMSC療法については、重症・治療抵抗性患者を対象とした単群研究、多施設研究、第I相試験、長期追跡研究、メタアナリシスなどが報告されています。

疾患活動性や免疫学的指標に前向きな変化を示した研究がある一方、多くは小規模、非盲検、対照群なしの研究です。また、ループス腎炎のプラセボ対照試験では、明確な上乗せ効果を確認できなかった報告もあります。

そのため、現時点でSLEに対するMSC療法の有効性を確定する段階ではありません。

重症・治療抵抗性SLE患者16名を対象とした初期研究

重症または治療抵抗性SLE患者16名を対象とした単群研究では、臍帯由来MSC投与後にSLEDAI、抗dsDNA抗体、補体、蛋白尿、腎機能などが評価され、集団全体として前向きな変化が報告されました。

ただし、対照群を置かない小規模研究であり、患者さんは投与後もグルココルチコイドや免疫抑制薬などの標準治療を受けていました。そのため、観察された変化をMSC単独の効果として断定することはできません。

活動性・治療抵抗性SLEを対象とした多施設研究

活動性・治療抵抗性SLE患者40名を対象とした多施設研究では、臍帯由来MSCを2回投与し、疾患活動性、臓器反応、再燃、安全性などが評価されました。

一部の患者さんで主要または部分的な臨床反応が報告されましたが、対照群のない研究であり、6か月以降に再燃した患者さんもいました。

この研究は治療抵抗性SLEに対する可能性を検討する参考になりますが、有効性を確定するには無作為化比較試験が必要です。

米国で実施された第I相試験

治療抵抗性SLE患者6名を対象とした第I相試験では、臍帯由来MSCの安全性、免疫学的変化、疾患活動性などが評価されました。

24週時点で6名中5名がSRI-4を満たすなどの探索的な結果が報告されていますが、第I相試験は主に安全性と実施可能性を評価する小規模研究であり、有効性を確定できる研究デザインではありません。

ステロイド量や疾患活動性にも変化が報告されていますが、治療効果を判断するには、より大規模な無作為化プラセボ対照試験が必要です。

用量漸増第I相研究

重症SLE患者を対象とした臍帯由来MSCの用量漸増第I相研究では、安全性、忍容性、免疫学的・生物学的変化、臨床反応などが評価されています。

この研究も主目的は安全性と適切な用量の検討であり、SLEに対する有効性を証明する試験ではありません。

長期安全性を評価した追跡研究

治療抵抗性SLE患者を6年間追跡した研究では、臍帯由来MSC投与後の感染症、腫瘍、臓器障害などが長期間評価されました。

長期安全性に関する参考データが報告されていますが、少数例の対照群を置かない追跡研究です。SLEに対する効果が6年間維持されたと確定するものではありません。

また、薬剤抵抗性SLEに対する別の長期追跡研究でも寛解、再燃、臓器反応、生存、安全性などが評価されていますが、結果の解釈には研究デザイン上の限界があります。

プラセボ対照試験では明確な上乗せ効果を確認できなかった報告もある

ループス腎炎に対する臍帯由来MSCのランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、標準治療へMSCを追加した群とプラセボ群が比較されました。

寛解はMSC群で9/12例、プラセボ群で5/6例に認められ、明確な上乗せ効果は示されませんでした。

この結果は、単群研究で報告された前向きな変化だけでは有効性を確定できず、対象患者、投与方法、細胞品質、併用治療をそろえた大規模試験が必要であることを示しています。

メタアナリシスとセクレトーム研究

ループス腎炎や自己免疫疾患に対するMSC療法のメタアナリシスでは、SLEDAI、尿蛋白、補体、腎機能などが統合評価されています。

前向きな結果を示す解析もありますが、元となる研究の多くは小規模で、細胞ソース、投与量、併用治療、評価方法が異なります。研究間のばらつきやバイアスにも注意が必要です。

WJ-MSC由来conditioned mediumを用いた研究では、自己抗体、NETosis、活性酸素、炎症、腎病理などへの作用が検討されていますが、これらはSLEモデルでの前臨床研究です。

これまでの研究では、疾患活動性や免疫学的指標に前向きな変化が報告されていますが、小規模・単群・非盲検研究が多く、プラセボ対照試験では明確な上乗せ効果を確認できなかった報告もあります。

現時点では、SLEに対するMSC療法の有効性を確定するには、さらに大規模で長期的な比較研究が必要です。

POINT

  • 臍帯由来MSCの初期研究では、疾患活動性や免疫学的指標への前向きな変化が報告されています。
  • 初期研究の多くは小規模・単群・非盲検で、標準治療も併用されています。
  • 第I相試験の主目的は安全性と実施可能性の評価であり、有効性の証明ではありません。
  • ループス腎炎のプラセボ対照試験では、明確な上乗せ効果を確認できませんでした。
  • 有効性を判断するには、大規模で長期的な比較研究が必要です。

全身性エリテマトーデスに対する幹細胞治療の安全性と副作用

SLEに対する臍帯由来MSC研究では、安全性や忍容性も評価されています。

一部の初期研究では、投与に直接関連する重大な有害事象が少ないことが報告されていますが、対象者数、投与量、投与回数、追跡期間には限りがあります。

小規模研究で大きな安全性シグナルが確認されなかったことは参考になりますが、「安心して受けられる治療」または「安全性が確立した治療」を意味するものではありません。

投与時に起こり得る副反応

初期研究では、一時的な吐き気、ほてり、頭痛、発熱、倦怠感、アレルギー反応などが報告される可能性があります。

症状が出た場合には、医師の管理のもとで適切に評価し、対応する必要があります。

SLE患者さん固有のリスク評価が必要

SLE患者さんでは、疾患そのものや併用する免疫抑制治療によって、感染症、血栓症、腎障害、心血管疾患、血球減少などのリスクが高まっていることがあります。

そのため、MSC投与との直接的な関連だけでなく、基礎疾患、臓器障害、併用薬、病気の活動性を含めて有害事象を慎重に評価する必要があります。

他家細胞への免疫反応と長期安全性

MSCは免疫に認識されにくい性質が研究されていますが、他家細胞である以上、免疫反応や抗体形成の可能性を含めた評価が必要です。

また、感染症、腫瘍、臓器障害、長期的な免疫への影響などについては、より多数例での長期追跡が必要です。

細胞品質と管理体制が重要

臍帯由来MSCやWJ-MSCを用いる場合は、ドナーのスクリーニング、感染症検査、細胞培養、品質検査、保管・輸送管理が重要です。

治療を行う施設では、細胞の由来、製造工程、培養環境、検査項目、投与方法、有害事象への対応、投与後のフォロー体制について説明できることが求められます。

POINT

  • 初期研究では安全性や忍容性が評価されていますが、症例数と追跡期間には限りがあります。
  • SLE患者さんでは、感染症、血栓症、臓器障害、併用薬を含めた全身評価が重要です。
  • 他家MSCへの免疫反応や長期安全性は、今後も検証が必要です。
  • 細胞品質、感染症検査、製造管理、長期フォロー体制が重要です。
  • SLEに対するMSC療法は、標準治療として確立されているわけではありません。

おわりに:SLEに対する再生医療研究のこれから

全身性エリテマトーデスでは、免疫寛容の乱れ、自己抗体、免疫複合体、補体、I型インターフェロン、B細胞、T細胞、NETsなどが複雑に関わります。

臍帯由来MSCやWJ-MSC、セクレトームを用いた研究では、免疫調整作用、抗炎症作用、B細胞・T細胞バランス、炎症性サイトカイン、組織を取り巻く環境への作用が検討されています。

一方で、WJ-MSC療法はSLEを治癒させたり、免疫を完全にリセットしたり、標準治療を置き換えたりする治療として確立されているわけではありません。肯定的な初期研究がある一方、プラセボ対照試験で明確な上乗せ効果を確認できなかった報告もあります。

現時点では、SLEに対するMSC療法は臨床研究段階であり、安全性と有効性を判断するには、より大規模で長期的な比較研究が必要です。

WJ-MSC療法やセクレトーム研究は、治療抵抗性SLEに対する新しい研究領域として、今後の検証が期待されています。

治療を検討する際には、現在の標準治療を中断せず、病気の活動性、臓器障害、治療歴、研究段階であることを含めて、主治医や膠原病・リウマチ専門医と十分に相談することが重要です。

\ お問い合わせはこちらから /
お問い合わせ
参考文献