ウォートンジェリー幹細胞と自己免疫疾患への治療(膠原病・関節リウマチ・シェーグレンなど)

自己免疫疾患とは?

日本の自己免疫疾患の患者数は、全身性自己免疫疾患とクローン病などの臓器特異的自己免疫疾患を合わせると約850万人と推定されています。

自己免疫疾患の中には、原因がわからないまま発症し、自然と治癒するものもありますが、ほとんどは慢性的な病気で、生涯にわたって薬で症状をコントロールする必要があります。

自己免疫疾患(じこめんえきしっかん、英: Autoimmune disease)とは、異物を認識し排除するための役割を持つ免疫系が、自分自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し攻撃を加えてしまうことで症状を起こす、免疫寛容の破綻による疾患の総称。

自己免疫疾患は、全身にわたり影響が及ぶ全身性自己免疫疾患と、特定の臓器だけが影響を受ける臓器特異的疾患の2種類に分けることができる。関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)に代表される膠原病は、全身性自己免疫疾患である。

出典: Wikipedia

どんな人が自己免疫疾患を発症するのか?

これまで長くの間、自己免疫疾患の原因は不明とされてきましたが、近年の研究でその原因が『エプスタイン・バール・ウィルス(EBV,EBウィルス)』の感染によるものであるということが明らかになりました。

このEBウィルスは、日本人では成人までに90〜100%の人が感染します。そして、終生に渡って持続感染し排除されません。

日本では成人までに90%〜ほぼ100%が、唾液や性分泌液を介してEBVに感染する。巧妙に潜伏、また時に応じて再活性化を来たして維持拡大を図るため、EBウイルスは終生に渡って持続感染し、体内から排除されない。EBVの主要な感染細胞はB細胞や上皮系細胞であるが、その他T細胞・NK細胞にも感染しうる。

出典: Wikipedia

疾患ごとに発症する年代や男女差などがあるようですが、すべての人が発症リスクを持つ疾患であることを意識する必要があります。

自己免疫疾患の治療法

近年、自己免疫疾患の治療法は大きく改善され、ステロイド薬だけでなく、免疫抑制剤など体内の過剰な免疫反応や炎症反応を抑える医薬品が開発されました。

しかし、必要な免疫までも抑制してしまい、ウィルス等に感染しやすくなったり、がんを誘発してしまう可能性も高く、腎障害や高血圧、心不全や神経疾患、関節性肺炎、肝障害、糖尿病などの重篤な副作用もあり、副作用が起きないように調整することが重要です。

また、これらの薬で症状を抑えることを目指していきますが、発症するとほとんどが治癒することがない慢性的な疾患ですので、身体的、心理的両面での負担が大変大きな病気です。

特に関節リウマチは患者数も多く、様々な薬が存在します。

関節リウマチの主な治療薬

薬剤 主な商品名 作用 推奨度 注意すべき副作用
免疫調整薬
全チオリンゴ酸
ナトリウム
シオゾール B 皮疹、蛋白尿
オーランフィン リドーラ B 下痢、軟便
D・ペニシラミン メタルカブターゼ B 皮疹、蛋白尿、肝障害、血小板減少
自己免疫疾患の誘発
サラゾスル
ファピリジン
アザルフィジンEN A 皮疹
ブシラミン リマチル A 皮疹、蛋白尿
ロベンザリット カルフェニール 腎機能障害
アクタリット オークル、モーバー B 皮疹
イグラモチド ケアラム、コルベット 肝障害
免疫抑制薬
メトトレキサート リウマトレックス A 間質性肺炎、骨髄障害、肝障害
ミゾリビン プレディニン B 高尿酸血症
レフルノミド アラバ A 肝障害、骨髄障害、下痢、感染症、 間質性肺炎
タクロリムス プログラフ 腎障害、高血圧、耐糖能異常
シグナル伝達を抑える
ゼルヤンツ トファシチニブ 感染症、带状疱疹、肝機能障害、貧血
オルミエント バリシチニブ 感染症、带状疱疹、肝機能障害、貧血
現在日本で使用されている抗リウマチ薬
これらの医薬品は人によって作用もことなりますので、何が良いのかは患者の症状や血液検査の数値、投薬後の予後を細やかに観察して、柔軟に対応する必要がありますので、良い専門医に相談することが大切です。

薬を使わずに治療をすることはできるか?

現在、東洋医学をはじめとした代替医療で薬を使わずに治癒を目指す方も多くなりました。

薬による副作用を恐れるがあまりに、病院にも受診せず自己判断で行動される事例もあるかと思いますが、自己免疫疾患に関しては、診断や投薬が遅れることで、寿命を短くしてしまうケースもあるため注意が必要です。

若い女性が発症することの多い、膠原病、全身性エリテマトーデスは、以前は5年生存率が50%という恐ろしい病気でしたが、現在はステロイド薬や免疫抑制剤を使用することで95%にまで高くなりました。

全身性エリテマトーデスの生命予後

全身性エリテマトーデスの生命予後のグラフ

また、関節リウマチは、発症から2年以内に最も急速に症状が進行するため、早期治療が重要です。
初期にできる限り早く受診し、投薬することで、関節破壊を抑制し、関節の機能を維持することを目指します。

残念ながら、自己免疫疾患は薬の助けを借りて、症状を緩和し、健康や機能を維持する必要がある病気です。薬を使わずに治療することは大変難しい上に、初期の治療への取り組みによって、その後の人生が大きく影響されることを考えると、薬を使わずに治療できるものではないということを広く周知する必要があります。

POINT

生命予後は治療法の進歩とともに大きく改善されてきています

※生命予後: あと何年生きられるか

自己免疫疾患に対するウォートンジェリー幹細胞治療の可能性

世界的に多くの関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患に対する臨床試験が行われています。

幹細胞治療の中でも、ひときわ免疫調整作用や抗炎症作用に力を発揮するウォートンジェリー幹細胞。さらにはウォートンジェリー幹細胞から抽出したセクレトームにも同様の作用が認められています。

出典: PubMed | National Library of Medicine PMCID: PMC6594275 PMID: 31281372

関節リウマチにおけるウォートンジェリー幹細胞治療の可能性

ウォートンゼリー幹細胞は、関節リウマチ(RA) やその他の関節炎の潜在的な治療薬です。

  • 抗炎症: ウォートンのゼリー幹細胞には抗炎症作用があり、 関節リウマチ(RA)患者の炎症を軽減できる。
  • 免疫調節性: ウォートンのゼリー幹細胞はRA患者の免疫 寛容を回復させ、免疫抑制剤の服用を中止できるようにする。
  • 軟骨形成性: ウォートンのゼリー幹細胞は、損傷した軟骨を修復し再生する可能性がある。

将来的に医薬品として実用化されることを目指していますが、現段階では自費治療としてマレーシアでのウォートンジェリー幹細胞およびセクレトーム治療が可能です。