他人の幹細胞は危険?幹細胞治療に関する誤解と実際のリスク

幹細胞治療は、再生医療の最前線として注目を集めています。
しかし、一部の誤った情報や噂が拡散されており、正しい判断を下す妨げとなっています。

可能性に魅力はある一方で皆さんが躊躇するのは、どんなリスクがあるのか?ということが不明確であるからだと思います。

本記事では、皆さんが心から安心してマレーシアでの幹細胞治療を受けられるようにこれらの噂を詳しくご説明していきます。

誤解1 他人の幹細胞は拒絶反応を起こし、命の危険を伴う

通常、臓器移植や白血病のための骨髄移植など、他人の細胞はドナーマッチングが必要で自分と違う型の場合は拒絶反応が起きて死に至ることもある。という話を聞いたことがある方は多いと思います。

このイメージから他人の幹細胞は危険であると想像してしまいがちです。

これまで他人の幹細胞であるウォートンジェリー幹細胞治療で拒絶反応が起きたことはありません。
その理由は、未分化の間葉系幹細胞には他人と自分を区別する『型』が存在しないからです。

この『型』と呼ばれるものは、HLA(ヒト白血球抗原)というもので、ほとんどの細胞の細胞膜に存在し自分の細胞とその他の異物を区別して健康を脅かす異物を体内から排除する仕組みがあります。

これを拒絶反応と言います

このHLAの型が違う細胞が、大量に体内に入ってしまえば免疫の暴走が起き、サイトカインストームにより呼吸不全や血圧の急激な低下・血栓形成により命を落とすこともあります。

しかし、ヒト白血球抗原が存在しない幹細胞は異物として全く認識がされません。
さらには、臍帯由来のウォートンジェリー幹細胞には特有の免疫特性があり、免疫機能を整えながら自分の細胞のように自然に生着し、組織の修復を担ってくれるのです。

ウォートンジェリー幹細胞における免疫特性は、再生医療の業界では世界的に有名な話ですので、万が一「他人の幹細胞は危険だ」とおっしゃるお医者様や専門家がいらっしゃったとすれば、残念ながら知識がない方であると言わずにはいられません。

最新の研究や論文を改めてご確認いただくことをおすすめします。

結論
「他人の幹細胞は危険」という主張は誤りです。
特に、臍帯由来ウォートンジェリー幹細胞は拒絶反応が起こりにくく、安全な治療として認識されています。

ウォートンジェリー間葉系幹細胞(WJ-MSC)は、分化能が高く、免疫特権状態にあり、採取が容易な幹細胞の一種で、法的または倫理的問題は生じません。WJ-MSCは、表現型と遺伝学的側面の両方で胚性幹細胞のいくつかの特徴を示します。

WJ-MSCには、自然免疫と獲得免疫の両方に関与する免疫調節特性があります。さまざまな研究で、標準治療に反応しない重度の患者にWJ-MSCを注入すると、HLA(ヒト白血球抗原)が完全に一致していなくても有益な効果があることが実証されています。

出典: Int J Stem Cells. 2019; 12(2): 218–226. Published online 2019 Apr 30.
PMCID: PMC6657936

誤解2 幹細胞治療にはがん化のリスクがある

投与した幹細胞ががん化したという事例はこれまで一度もなく、そのような可能性は一切ありません。

この噂の原因として考えられるのは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)との混同です。iPS細胞は遺伝子を操作して作成されるため、がん化のリスクが指摘されています。

iPS細胞と幹細胞治療に使われる体性幹細胞の違いは、こちらの再生医療に活用される幹細胞の種類をご覧ください。

京都大学の山中教授が発明し、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞して話題となったiPS細胞(人工多能性幹細胞)ですが、実用化には大きな課題があり、その後の研究が難航しています。

それが「iPS細胞ががん化してしまう」という課題でした。

その原因は明確で、iPS細胞を作成するときに遺伝子を組み換えるということと、組み換える遺伝子のひとつが「がん遺伝子」だからです。

その後、がん遺伝子を組み込まずにiPS細胞を作成することに成功したそうですが、実用化はまだまだ厳しい道のようです。
さらに研究が進み多くの人に役立てられることを祈念します。

結論
幹細胞治療にがん化のリスクがあるという主張は、iPS細胞との混同に基づく誤解です。
間葉系幹細胞を使用した治療では、そのようなリスクは報告されていません。

誤解3 幹細胞治療は医薬利権の圧力により普及が阻害されている

幹細胞治療に対して、従来の医療や薬剤と対立するものと考えられることがあります。
しかし、現代医療の進歩は衛生環境の向上とともに、医学的な治療法の発展によって支えられてきました。

薬剤は、機能が低下した細胞の働きを補助する役割を担っており、適切な治療の一環として重要です。そのため、幹細胞治療が普及したとしても、適切な薬物療法と併用することが望ましい場合があります。

一方で、薬剤の過剰な投与により副作用が生じることがあり、そのような場合には、幹細胞治療を通じて副作用の軽減や減薬の可能性を検討することも考えられます。

幹細胞治療は、既存の医療を否定するものではなく、従来の治療と補完的な関係を築きながら、患者の健康維持を目指すものです。

結論
幹細胞治療の普及が医薬業界によって阻害されるということはありません。

最後に

『他人の幹細胞はリスクがある』という噂について検証した結果、現時点での医学的な研究に基づけば、その多くが科学的根拠に欠けるものであることがわかりました。

幹細胞治療に関する正確な情報が十分に浸透していないため、安全性に対する誤解が広まっていることも事実です。こうした誤解は、必ずしも悪意によるものではなく、正しい知識が十分に共有されていないことが一因と考えられます。

23Cでは、幹細胞治療の安全性や有効性について、最新の科学的根拠に基づいた情報を発信し、患者の皆様に正確な知識を提供できるよう努めてまいります。