セクレトームとエクソソームの違いと比較

近年、再生医療の現場で「エクソソーム」や「セクレトーム」という言葉を耳にする機会が増えてきました。どちらも幹細胞などの細胞が分泌する物質に関連した概念ですが、その違いは何でしょうか。

本記事ではエクソソームとセクレトームの違いを整理し、セクレトームがエクソソームの利点をすべて包含する包括的なものであることをわかりやすく解説します。

エクソソームとは何か?

エクソソームは、細胞から放出されるとても小さな粒(カプセルのような構造)で、中には細胞からの「メッセージ」や「働きかけの材料」が詰まっています。

大きさはわずか0.0001ミリ以下という超微小サイズで、特殊な膜に包まれています。

役割は、ずばり「細胞間の伝達係」

たとえば、体のどこかが傷ついたとき、修復の指示を出す細胞が、その内容をエクソソームに乗せて別の細胞に届けます。

受け取った細胞は、そのメッセージに反応して、修復や炎症の調整を行うのです。[2]

この「メッセージの伝達機能」に注目が集まり、美容分野では肌の再生や毛髪の回復、医療分野では脳神経や免疫の病気への応用が研究されています。[6]

セクレトームとは何か?

セクレトームとは、細胞、特に幹細胞が周囲に放出する「役に立つ成分の集合体」のことを指します。[1]

たとえば、人の体がケガや病気をしたとき、細胞は自分の周りに修復や調整に役立つさまざまな物質を出して助けようとします。

セクレトームは、そうした天然の治癒成分をまとめたものと考えるとわかりやすいかもしれません。

この中には、組織の回復を促す「成長因子」や、炎症を抑える「サイトカイン」、細胞同士の情報を伝える「エクソソーム」などが含まれており、それぞれが協力して体の回復をサポートします。

まさにセクレトームは、細胞がつくり出す「自己修復プログラムのエッセンス」とも言える存在です。

最近では、このセクレトームを活用して、肌の若返りやケガの回復、関節の痛みの軽減などに使う再生医療や美容治療も広がり始めています。

まだ新しい治療法ですが、体にやさしく自然に働きかける点が高く評価されており、今後さらに活用が進むと期待されています。

セクレトームとエクソソームの違い

上述のように、エクソソームはセクレトームに含まれる構成要素の一つです。

セクレトームはエクソソームをはじめとする多様な因子を含む混合液であるのに対し、エクソソーム単体はその混合液から分離された小胞成分のみを指します。

エクソソームを分離・精製すると濃縮されたエクソソーム製剤が得られますが、その過程で他の重要な可溶性因子や微小な小胞は失われてしまいます。

つまりセクレトームにはエクソソームの利点がすべて含まれている上に、エクソソーム単独では得られない他の因子による作用も期待できるのです。[4]

セクレトームとエクソソームの比較

セクレトーム
Secretome
エクソソーム
Exosome
細胞外小胞の
マイクロベシクル
含む 含む
細胞外小胞の
エクソソーム
含む 含む
ケモカイン 多く含む 含むが少量
サイトカイン 多く含む 含むが少量
成長因子 多く含む 含むが少量

上の比較からもわかるように、セクレトームにはエクソソームの持つ利点がすべて含まれています。

エクソソームは、幹細胞治療と同じように組織の修復や炎症の抑制といった効果が期待される優れた成分でありながら、拒絶反応などの副作用が起こりにくい安全性の高さも魅力とされています。

一方で、セクレトームも同じく細胞が放出する成分だけを使っているため、エクソソームと同じような安全性と効果が期待できます。

さらにセクレトームには、エクソソーム以外にも「サイトカイン」や「成長因子」など、体にとって有益なさまざまな物質が一緒に含まれており、それらが複合的に作用することで、より幅広い効果が期待できるのが特長です。[5]

実際、エクソソームだけを取り出す過程では、その他の大切な成分が取り除かれてしまうのに対し、セクレトームではそれらも含めてそのまま利用できます。

こうしたことから、セクレトームはエクソソームの上位にあたる概念として扱われることがあります。

ただし、セクレトームとエクソソームは競合する関係ではなく、セクレトームの中にエクソソームが含まれているという「一部と全体」の関係です。

再生医療の現場では、治療の目的によって「エクソソームを高濃度で使う方法」や「セクレトーム全体を活用する方法」など、状況に応じた選択がされています。

セクレトームは、さまざまな成分が協力し合うことでより広範囲の働きが期待され、エクソソームは特定の情報を効果的に届ける点に優れています。

どちらも高い安全性と有用性を持っており、適切に使い分けることでよりよい治療につながると考えられています。

ウォートンジェリー由来セクレトームと23Cの取り組み

セクレトームに含まれる成分は、もとになっている幹細胞の種類によって大きく異なります。中でも近年、特に注目されているのが臍帯(へその緒)から採取された幹細胞が分泌するセクレトームです。

臍帯の内部には「ウォートンジェリー」と呼ばれるゼリー状の組織があり、この部分には若くて活動性の高い間葉系幹細胞(WJ-MSC)が豊富に存在しています。[8]

これらの幹細胞は、他の細胞に比べて増殖力に優れ、様々な生理活性物質を多く分泌することが知られています。

ウォートンジェリー由来の幹細胞が出すセクレトーム(幹細胞培養上清)は、脂肪や骨髄など他の由来の幹細胞と比べて、エクソソームや成長因子の種類・量が圧倒的に豊富であるという研究報告もあります。[7]

さらに、このセクレトームは成分のバリエーションも豊かで、多角的な治療効果が期待されており、安全性の面でも非常に評価が高くなっています。

23Cでは、このウォートンジェリー由来の幹細胞を自社の研究施設にて培養・管理し、そこから生成された高品質なセクレトームを活用した治療を提供しています。

セクレトームには、エクソソームをはじめ、サイトカインや成長因子など身体に有益な成分が多数含まれており、それらをまとめて投与することで、体の自己修復力を最大限に引き出すことを目指しています。

現時点での科学的エビデンスからも、ウォートンジェリー由来のセクレトームは高い安全性と有効性を兼ね備えた治療素材として非常に有望であることが示されています。[9]

23Cでは、これらの確かな根拠に基づいた先進的な再生医療を通じて、患者様のQOL(生活の質)の向上を目指しています。

まとめ

セクレトームとエクソソームは、言葉が似ているため混同されがちですが、実際には「含まれる範囲」が異なる別の概念です。

エクソソームは、細胞が外に出す小さな粒子の一つで、主に情報伝達の役割を担っています。
一方でセクレトームは、そのエクソソームを含めたさまざまな分泌物(成長因子・サイトカインなど)をまとめた細胞由来の“有効成分のセット”のような存在です。[3]

エクソソーム単体でも再生医療で有望な効果や高い安全性が確認されていますが、セクレトーム療法ではそのエクソソームの力をそのまま含みつつ、さらに多くの因子による相乗的な働きが期待できます。

現在の研究結果からも、セクレトームは幹細胞そのものを使わずに治療効果を得られる安全で効果的な手段であることが示されています。

こうした背景から、セクレトームを使った治療は今後ますます広がり、「細胞を使わない再生医療」として多くの方の選択肢になると考えられています。

セクレトームとエクソソーム、それぞれの違いと特徴を理解することは、再生医療を正しく選ぶ第一歩です。
そして、信頼できる医療機関(たとえば当院23Cのような)で、根拠に基づいた治療を受けることが、安全で納得のいく医療につながるはずです。

再生医療を検討されている方にとって、この情報が少しでもお役に立てれば幸いです。

23Cのセクレトーム療法について
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参考文献

セクレトームは、可溶性タンパク質と細胞外小胞(EVs)で構成されており、幹細胞の細胞を使わない治療手段として注目されている。

出典:Comparative Proteomic Analysis of MSC Secretome – IJMS (2021)

エクソソームは、mRNAやmiRNAなどを含み、ターゲット細胞に情報を伝えて炎症反応や修復に関与する。

出典:Exosomes in Biomedical Applications – Biomedicines (2023)

セクレトームには、細胞が放出するサイトカイン・成長因子・EVなどが含まれており、治癒や修復に多面的に寄与する。

出典:WJ-MSC Secretome and Clinical Applications – Front. Cell Dev. Biol. (2023)

セクレトームは、サイトカインやエクソソームなど複数の有効因子を同時に含み、単一因子よりも優れた効果を示す可能性がある。

出典:Stem Cells vs. Secretome in Regenerative Medicine – Stem Cells Int. (2021)

セクレトームは、再生・抗炎症・免疫調節・抗線維化などの多様な作用を同時に発揮することが知られている。

出典:Cell Secretome Strategies for Wound Healing – Polymers (2022)

エクソソームは、美容医療分野においてコラーゲン生成や皮膚再生を促進する能力が注目されている。

出典:Use of Exosomes in Cosmetics – MDPI (2023)

ウォートンジェリー由来幹細胞のセクレトームは、他のMSCよりもタンパク質の種類と量が豊富である。

出典:Comparative Proteomic Analysis of MSC Secretome – IJMS (2021)

ウォートンジェリーは臍帯の中のゼラチン質で、若く未分化な幹細胞(WJ-MSC)が豊富に存在している。

出典:Comparative Proteomic Analysis of MSC Secretome – IJMS (2021)

セクレトームは、細胞を使わずに高い安全性と再生効果が期待される治療法として注目されている。

出典:Cell Secretome Strategies for Wound Healing – Polymers (2022)